ICボルドー66Dを40倍で8L散布|ベト病が広がりつつあるため希釈倍率を変更!

2026年8月13日(曇り)

今回は、ブドウのベト病対策としてICボルドー66Dを40倍に希釈し、8L散布しました。

実は、1週間前にもICボルドー66Dを50倍で散布しています。

※記事はこちらから。
ぶどうにICボルドー66Dを散布|べと病とハダニの被害で葉かきのイタチごっこ

しかし、1週間経過してもベト病と思われる症状がぽつぽつと出続けており、これまで症状が確認されていたクイーンセブンやヌーベルローズだけでなく、シャインマスカットにも症状が広がりつつあるように感じています。

そこで今回は、前回の50倍からさらに濃度を上げて、40倍で散布することにしました。

 改めてICボルドー66Dについて調べてみると、そのルーツには140年以上前から使われ続けている「ボルドー液」の歴史がありました。

今回は実際の散布記録と合わせて、ボルドー液がどのように生まれ、現在のICボルドー66Dにつながっているのかも紹介します。

ボルドー液は19世紀のフランスで生まれた

ボルドー液が生まれたのは、1880年代のフランスです。

当時、フランスのブドウ栽培では「ベト病」が大きな問題になっていました。

そんな中、ブドウを盗まれにくくするため、街道沿いのブドウに硫酸銅と石灰を混ぜた液を塗っていたところ、そのブドウでは病気の被害が少ないことが分かりました。

この現象に注目したのが、フランスの植物学者ピエール・マリー・アレクシス・ミラルデです。

ミラルデはこの現象を詳しく研究し、硫酸銅と石灰を組み合わせた液がブドウのベト病対策に有効であることを見いだしました。

こうして生まれたのが、現在まで続くボルドー液です。

最初から「ブドウの病気を防ぐ薬を作ろう」と考えて作られたわけではなく、別の目的で使われていた液に病害を抑える効果があることが分かったというのが面白いところです。

その後、研究が進み、ボルドー液は世界各地の農業で使われるようになりました。

ボルドー液の基本は「硫酸銅+石灰」

昔ながらのボルドー液は、

硫酸銅+石灰+水

を混ぜて作ります。

硫酸銅に含まれる銅が病原菌に作用し、病原菌の発芽や感染を抑える働きをします。

一方で、硫酸銅だけでは植物への薬害が問題になります。

そこで石灰を組み合わせることで、植物への影響を抑えながら銅の殺菌作用を利用します。

現在の銅剤も、基本的にはこの銅による病害防除という考え方を受け継いでいます。

140年以上経った現在も銅剤が使われている

1880年代にフランスで生まれたボルドー液は、その後世界中へ広がりました。

ただ、昔ながらのボルドー液には扱いにくい部分もあります。

硫酸銅と石灰をそれぞれ準備し、使用するたびに調製する必要があります。

また、調製方法によっては薬剤の状態が変わったり、作った後に長期間保存できなかったりするなど、使う側には手間がかかりました。

そこで、昔ながらのボルドー液の効果を生かしながら、もっと簡単に使える製品にできないかという研究が進められました。

そこで登場したのが、今回使用しているICボルドーです。

「ICボルドー」という名前

今回使っているのは、井上石灰工業株式会社のICボルドー66Dです。

「ボルドー」は、もちろんフランスで生まれたボルドー液に由来します。

井上石灰工業では、従来のボルドー液が持つ殺菌効果を生かしながら、調製の難しさなどを改善するために研究を開始。

同社によると、1984年に研究を開始し、10年にわたる試行錯誤の末、1994年にICボルドーを発売しています。

つまり、

昔ながらのボルドー液

もっと簡単に使えるようにできないか?

井上石灰工業が研究

製剤化

1994年にICボルドー発売

という流れです。

「ボルドー」は、フランスで生まれたボルドー液に由来するものです。

「IC」という名称については、井上石灰工業が開発した製品であることから、同社の「ICボルドー」という名称として親しまれているようです。

ICボルドー液の利点

昔ながらのボルドー液は、使用するたびに硫酸銅と石灰を調製する必要があります。

一方、ICボルドーはあらかじめ製剤化されているため、使用するときは水で希釈するだけ。

井上石灰工業では、ICボルドーについて、長期保存が可能であることや、葉への付着性が高いこと、微粒子によって目詰まりしにくいことなどを特徴として挙げています。

家庭菜園で使う側からすると、毎回ボルドー液を一から作らなくていいのは大きなメリットです。

ICボルドーには3種類ある

ICボルドーは1種類だけではなく、ICボルドー412、ICボルドー66D、ICボルドー48Qの3種類があります。

いずれも銅を有効成分とするボルドー系の殺菌剤ですが、それぞれ製剤の内容や登録されている作物・病害、希釈倍率などが異なります。

今回使用したのは、この中のICボルドー66Dです。

同じ「ICボルドー」という名前でも、種類によって使用できる作物や病害、希釈倍率が違うため、使用するときはそれぞれの製品ラベルや登録内容を確認する必要があります。

ICボルドー66Dとは?

今回使用したICボルドー66Dは、農林水産省に登録されている銅水和剤です。

有効成分は、

塩基性硫酸銅28.1%

です。

製剤は青色の水和性粘稠懸濁液体。

農薬登録は1994年3月22日です。

つまり、今回使っているICボルドー66Dは、1880年代に生まれたボルドー液の考え方を受け継ぎながら、現在の技術で扱いやすく製剤化された銅剤ということになります。

140年以上前に生まれた防除技術が、形を変えながら今も使われていると考えると、なかなかすごいことだと思います。

散布について

ここからは、今回の散布についてです。

実は、1週間前にもICボルドー66Dを50倍で散布しています。

「短い間隔で、もう一度散布して大丈夫なの?」

と思うかもしれません。

今回、再びICボルドー66Dを散布したのは、ブドウのベト病に対する総使用回数の制限が設けられていないためです。

農薬登録上、ICボルドー66Dのブドウ・ベト病に対する総使用回数は「-」となっています。

そのため、今回のように前回の散布から1週間後に、病害の状況を確認したうえで再度散布することが可能です。

50倍散布後の様子

前回は50倍で散布し、その後のブドウの様子を観察していました。

ところが、散布後もベト病と思われる症状が完全には収まらず、

葉を確認すると、ぽつぽつと新たな症状が出ているように感じました。

さらに気になったのが、品種をまたいだ症状の広がりです。

これまでベト病の症状が確認されていたのは、主にクイーンセブンやヌーベルローズでした。

ところが最近になって、シャインマスカットでもベト病と思われる症状が見られるようになってきました。

もちろん、葉に出ている症状がすべてベト病だと断定することはできません。

しかし、これまでの発生状況と比較すると、

「ベト病の症状がシャインマスカットにも広がりつつあるのでは?」

と感じるようになりました。

今回は40倍に変更

そこで今回は、前回の50倍からさらに濃度を上げて、40倍で散布することにしました。

40倍で4L×2回の散布液を作るため、使用したICボルドー66Dは約200mLです。

ICボルドー66Dは、ブドウのベト病に対して25~200倍、発病前~発病初期で登録されています。

そのため、今回の40倍はベト病に対する登録範囲内です。

濃度を上げた理由として、

50倍で散布してから1週間経過しても症状がぽつぽつ出続けていること。

そして、

クイーンセブンやヌーベルローズで見られていた症状が、シャインマスカットにも広がりつつあるように感じたこと。

この2つが大きな理由です。

ただし、

「濃くすれば必ず効く」

というわけではありません。

ICボルドー66Dのような銅剤は、濃度が高くなるほど薬害にも注意する必要があります。

そのため、今回は病気の進行だけでなく、40倍散布による薬害が出ないかについても観察していきます。

ICボルドー66Dは「治す」より「守る」薬

ICボルドー66Dのような銅剤は、病原菌が植物内部に侵入してから病気を治療するというより、植物の表面に銅成分を付着させ、病原菌の発芽や感染を抑える予防的な薬剤です。

そのため、病気が広がってから使うというより、発病前~発病初期に使用することが重要です。

今回のように、すでに症状が確認されている場合は、散布後に新しい症状が増えていないか、既存の病斑がどうなっているかを観察することが大切だと思います。

4Lを2回噴霧器で散布

今回は噴霧器を使って、ブドウ全体に薬液を散布しました。

ICボルドー66Dは青色の薬剤なので、散布すると葉の表面に青白い薬剤が付着します。

ブドウは葉が重なってくると、表側から散布しただけでは薬液が届きにくい場所があります。

そのため、今回はできるだけ葉の表裏を意識しながら、薬液がムラなく付着するように散布しました。

散布後は薬害とベト病の両方を確認

今回は40倍という濃度で散布したため、今後は薬害が出ないかを確認していきます。

特に、

  • 葉の変色
  • 葉焼け
  • 新葉への影響
  • 果実への薬剤付着
  • ベト病と思われる新しい症状の発生
  • 既存の病斑の変化

などを観察していきたいと思います。

前回の50倍散布から1週間という短い間隔での散布になったため、今回の40倍散布後は特に葉の状態を注意して見ていくつもりです。

まとめ

今回、ICボルドー66Dについて調べてみて、一番面白いと感じたのがその歴史です。

19世紀のフランスで、ブドウのベト病対策として使われ始めたボルドー液。

そこから140年以上が経った現在でも、銅剤は農業の現場で使われ続けています。

そして、そのボルドー液をもっと使いやすくしようと研究が進められ、井上石灰工業によってICボルドーが開発されました。

昔ながらのボルドー液が持っていた銅による病害防除の考え方を受け継ぎながら、調製や保存などの扱いやすさを改善したものが、現在のICボルドーです。

そう考えると、今回使ったICボルドー66Dは単なる「青い殺菌剤」ではありません。

1880年代に生まれたボルドー液の技術が、140年以上経った現在も家庭菜園のブドウ栽培で使われている。

そう考えると、なんだか感慨深いものがあります。

今回は、前回の50倍散布でもベト病と思われる症状がぽつぽつ出続けていること、そしてクイーンセブンやヌーベルローズだけでなく、シャインマスカットにも症状が広がりつつあるように感じたことから、40倍に希釈倍率を変更して8L散布しました。

果たして40倍にしたことで、ベト病の進行を抑えることができるのか。

それとも、別の原因による症状なのか。

そして、40倍という濃度で薬害が出ないのか。

これからのブドウの変化を観察しながら、引き続き栽培記録として残していきたいと思います。

※現在のブドウの様子の記事はこちらから。
現在のブドウの状況|シャインマスカット・ヌーベルローズ・BKシードレスの糖度を測定

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